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“事実は、小説よりも奇なり”と言う言葉がある。

こんな偶然があるの?

「ええ、彼女は僕の高校の同級生なんです」

平林くんがあの人――陣内さんに言った。

陣内さんの眉が一瞬だけピクリと動いたけど、
「そうか」
と、それだけ答えただけだった。

たぶん、わかったのだろう。

私を賭けの対象にした、彼だと。

そのことを知っているのは、陣内さんだけだからだ。

「久しぶりだな」

平林くんが言ったので、
「久しぶりですね」

私は言った。

「一瞬、誰だかわからなかったよ」

そう言って、平林くんは笑った。