好きな人がいるからお見合いを断るって、帰ったら電話で伝えよう。

資料の枚数を数えながら、そう思った。

「ずいぶん真っ青だね」

「きゃっ!」

その声に振り返ると、
「主任…」

この課の主任である東雲恭吾がいた。

謎めいた独特の雰囲気は、相も変わらずである。

この人、生まれた時からずっとこうだったのかしら?

「悲鳴をあげられる理由がわからない」

そう言った彼に、
「すみません…」

私は謝った。

「まあ、なれたけど」

はっ?

その言葉に私は首を傾げた。