「お昼?」

聞き返した私に、彼女は嫌な顔を1つも見せずに答えてくれた。

「陣内さん、これから会議があるみたいで忙しくて食事をするヒマがないからって。

それで、お昼を作って届けにきてくれって」

そんな彼女を健気だなと、私は思った。

どこまでも純粋で、まっすぐな子だと。

「陣内さんの好きなものをたくさん入れたから、喜んでくれるかな?」

さすが、あの人のお姫様だ。

あの人の好きなものを、私は1つも知らない。

あの人が抱えていた心の傷跡も、藤堂さんが話してくれるまで気づかなかった。