それにあの人の隣には、もうかわいいお姫様がいる。

私は忘れて、新しい恋をするって決めたじゃない。

頭の中でそんなことを言い聞かせていたら、
「――ん〜っ」

私の下からうなり声が聞こえた。

失礼だけど、すっかり忘れてた…。

視線を向けると、彼が目を開けた。

二重の切れ長だった。

彼は躰を起こすと、
「ふわっあ〜」

両手を上にあげ、大あくびをした。

何ですか、この人…?

そう思っていたら、彼が私の方に視線を向けてきた。