あの人と出会ったから、私は変わった。

あの人のおかげで、私は変われた。

あの人に出会わなければ、私の人生は暗かったと今でも思う。

同じ課の後輩たちの熱愛と結婚に嫉妬して、そのくせ自分は恋愛小説のような甘い世界に夢ばかり見ていた。

変わろうと思わなければ、探そうとも思わない。

そんな人生を、歩いていたんじゃないかと今でも思う。


一体誰だったって言うのかしら?

更衣室のロッカーの前で、私はため息をついた。

姫島さん、って言ったわよね?

本当に何者なのよ。

手で額を押さえながら、オフィスへと足を向かわせた。