「ほらよ、夏美」 俺は次の日、夏美に奪い取られたお金を渡して言う。 「ありがとう!」 「約束だ………名前」 何て言うんだ、この世界をいまも、ただなにもなかったかのように歩いている人間――― 「名前は、仁――――」 仁か。 そう言えば廉のやつ、美咲のお兄ちゃんの名前は仁って言うって昨日電話で…してた―――。 「わかった、じゃあな!もう甘い話に乗るんじゃねぇぞ」