「よく会うね」



大月学園を出て、調査がてらに歩き回っていたら、懐かしい場所に来た。

大路学園。

大月学園の姉妹高と言われているが…定かではない。

「思わず…ここに来てしまったな」

頭の中に響く声に、麗菜は頷いた。

「そうですね」

外から、校舎を見上げている時に…突然、後ろから声をかけられたのだ。

「え!」

驚きながら、麗菜は振り返った。

感傷に浸ってしまって、周囲に気を配るのを忘れていた。

すると、笑顔の和恵が立っていたのだ。

「赤星さんの家もこの辺なの?」

「う、うん…」

頷きながらも、麗菜は言い直した。

「ちょっと…離れてるかな」

「ふ〜ん」

言いにくそうな麗菜の雰囲気を察したのか…和恵は、話題を変えた。

「この学校には、あたしのお姉ちゃんが通ってたんだ」

感慨深気に、校舎を見上げる和恵の横顔を見つめ、麗菜は記憶を探っていた。

(お姉ちゃん…。速水先輩か…)

記憶の中にある速水香里奈の顔を思い出し、

(あまり似てない姉妹ね)

少し失礼なことを思ってしまった。

「そうだ!」

突然、和恵は笑顔になると、麗菜の方に顔を向けた。

「あたしんちは、この坂を真っ直ぐ上がった所にあるんだ」

正門前を、山手までのびていく道。

「!?」

麗菜は思わず、道の向こうに目をやった。

「少し寄っていかない?あたしんちは、お店をやってるの。コーヒーや紅茶くらいならご馳走するよ」

和恵の言葉に、麗菜の頭に声が響いた。

(ま、まさか…あそこか!)

驚きの声に、麗菜は頭の中で頷いた。

(おそらく…そうですよね)

そこは、伝説の場所だった。

「行こうよ」

少し躊躇っている麗菜の腕を強引に掴むと、和恵は山に向けて歩き出した。

「!?」

結構な力に、麗菜はびっくりしてしまった。

(ど、どうしますか?)

頭の中の声に訊いた。

(仕方がない。行くぞ)

(わかりました)

麗菜は、覚悟を決めた。