「月よ!我は帰って来たぞ!」

大月学園の正門を守るカードマンを足蹴にして、黒いピチピチのタイツを着た男が、拡声器を校舎に向けて叫びながら、歩き出した。

「うん?」

その声に気付いた花町蒔絵は、授業中でありながらも携帯電話の上を忙しく動き回る指を止めずに、眉だけを寄せた。

「な、なんだ?」

拡声器の声にざわめく生徒達。しかし、その混乱はすぐに鎮まった。

「変態…もとい怪人注意報です。生徒達は、速やかに避難して下さい」

生徒会からの校内アナウンスを受け、生徒達は頭をかき、うんざりした顔になった。

「またかよ」

「もう出ないんじゃなかったの」

口々に愚痴を言いながら、教室を出る生徒達。

「特に、乙女レッドこと結城里奈!貴様は許さん!」

そんな生徒達に紛れて逃げようとしていた結城里奈は、拡声器の声にびくっと体を震わせた。

周囲の目が、里奈に向けられた。

「他の乙女ソルジャーも」

「コラ!正体をばらすな!」

里奈は生徒達の目から逃れるように、教室内に戻ると、窓から身を乗り出して、叫んだ。

「あそこか!」

里奈の姿を目にした黒タイツの男は、にやりと笑い、

「今こそ!復讐の時!行け!再生魔神軍団!そして、仮出所怪人軍団よ!」

里奈を指差した。


「きいい!」

奇声を発して、廊下をダラダラと歩く生徒達の前と後ろに、黒タイツを被った戦闘員が姿を見せる。

「きゃ!痴漢よ」

真後ろにいた女子生徒が、悲鳴を上げた。

「フハハハ!」

その悲鳴に歓声をあげる1人の男。

「男は、誰も痴漢願望を持っている!」

男はくねる指を突きだし、

「闇のゴールドフィンガー怪人痴漢男!再び参上!」

女子生徒限定で襲いかかる。

「きいい!」

勿論、戦闘員も女子生徒だけを狙う。

「やめろ!」

最初に、触られた女子生徒の前に、男子生徒が庇うように立った。

「あああ!」

その姿を見て、廊下で崩れ落ちる1人の女子生徒。

「夏希!」

廊下に現れた怪人の気配を感じて、里奈が教室から飛び出した。