だからこそ、世界が違うが、2人の黒谷理事長もまた繋がっていた。

漠然ではあるが、互いの危機を知ることができたのだ。

「今や実世界で相当な力を持つ開八神家。その気にならば、一国の軍隊をも操ることができるはずです。その開八神家が恐れるものとは何ですか?」

黒谷の質問に、猫沢は答えることなく…頭を下げるとドアを開け、理事長室を出た。

「失礼します…」

最後の言葉を残し、あっさりと出ていった猫沢を引き留めることはせず、黒谷は本当に訊きたかったことを呟くように言った。

「あなたは…どうして、彼らといるのですか?九鬼様」




理事長室を出た猫沢が廊下を歩く東館の上…屋上では、サーシャとフレアがいた。

「貴様!何を考えている!」

サーシャは、金網にもたれるフレアに詰め寄っていた。

「貴様の能力は、人前で使わないと決めたはずだ!それに何よりも!オウパーツによって、何度も破壊された貴様の核!それを再生させている力は!」

「わかっている」

フレアは、サーシャの目を睨んだ。

「う!」

その眼力の強さに、サーシャは思わず怯んでしまった。

「心配しなくて…自分の体の限界のことは、わかっているわ」

サーシャの前からすり抜けたフレア。

「し、心配など!」

口ごもるサーシャ。

「あたしはそう簡単に死なない。もう二度と…」

フレアはそう言うと、全裸の体に炎を纏うと、温度調整し、さらに色をつけることで、大月学園の制服を身に着け、屋上を後にした。

「まったく」

サーシャは毒づくと、歩き出した。

「まさか…炎の騎士団親衛隊の蛍火のフレアとともにするとはな」

ブルーワルードにいたならば、明らかに戦っていた相手である。

「皮肉だが…仕方がない」

サーシャは学生服のスカートのポケットから、あるものを取り出した。

それは、指輪である。

「ロバート…」

サーシャは指輪をぎゅっと握り締めた後、左手の薬指にはめると、前方を睨み付けた。

「ブラックサイレンスの1人!サーシャ・ハイツ!参る!」

床を踏みつけるように、力強く歩き出した。