「じ、実世界か!」

拳を握り締め、悔しがる九鬼の姿を見て、刈谷は眉を寄せた。

「き、貴様…。やはり、そうか!肉体は、闇の女神のもの!だとすれば、力を使うことができるかもしれん」

刈谷の目が輝き、九鬼の体をスキャンした。

「く!」

次の瞬間、刈谷は顔をしかめた。

「貴様の魂が、デスペラードの力を封印しているのか!これでは、力を使えん!」

「あたしの魂が封印?」

九鬼は、刈谷を見た。

「しかし!」

刈谷の目の輝きが、消えていく。

「意識を飛ばし、我がお前に憑依すれば…」

普通の目に戻ったが、希望の光が灯っていた。

「いける!リンネ様のもとに!この空間に僅かに残る軌跡を手繰ればな!」

刈谷の魔力が上がった。

そして、人間の姿を捨てようとした時、

「待て!」

九鬼は刈谷を止めた。

じっと刈谷の目を見つめ、

「協力しょう。あたしも実世界に行きたい」

拳をぎゅっと握り締めると、自らの脇腹に突き刺した。

「う!」

身をよじり、その場で崩れ落ちた九鬼は、意識を失った。

「フン」

この行為に呆れたように鼻を鳴らしてから、刈谷は変身を止め、九鬼に近付いた。

「魔物に身を預けるか…。他人の為に」

身を屈めると、うつ伏せに倒れている九鬼の額に手を当てた。

「遠慮なく、お前の肉体使わせて貰うぞ!」

刈谷の体が一瞬で消えると、九鬼の体を炎が包んだ。

そして、紙が尽きるよりも速く、九鬼の体も消えた。

2人は同化して、実世界へと向かったのであった。