「は、は、は、は…」

人混みから離れ、路地裏を走る制服姿の少女に、迫る数人の男。

「!」

ついに、行き止まりまで追い詰められた少女の後ろから、ゆっくりと近付く男達。

「なぜ…あの店の前にいた!」

「普通の人間には、見えないはずだ!」

「我々の仲間かと思ったが…お前からは、匂いがしない!」

「ま、まさか…異世界から来た魔物か!」

「だとしたら…生かしては帰さない!」

男達の姿が変わる。

人間ではなくなる男達を見て、少女は呟いた。

「魔獣因子…」

「な!」

各々が化け物になった男達は、絶句した。

「ど、どうして…その呼び名を!」

「知っている!」

まるでゴリラのような姿になった男が、少女を掴もうと丸太のような腕を伸ばした。

しかし、次の瞬間…男達は目を疑った。

丸太のような腕が、斬り落とされたのだ。

「な」

男達の目は、斬り落とされた腕よりも、少女が手に持つ刀に目を奪われていた。

少女は目を細めると、血に染まった刀を一振りしてから、自らの鳩尾辺りに差し込んだ。

「!」

自害したのかと思ったが、刀は少女を貫くことなく、少女の中に収まった。

それから、少女はきりっと男達を睨みながら、ある言葉を口にした。

「モード・チェンジ」

「!?」

男達は、動けなくなった。

少女から、変わった女の姿を見てしまったからだ。

「あ、あなた様は!」

数秒後、断末魔の叫びが路地裏にこだました。




「じゃあね。里緒菜。元気出しなよ」

「ありがと」

店を出て、挨拶を交わすと、2人は別れた。

「…」

ゆっくりと、人混みの中を歩き出したが…里緒菜は足を止めた。

慌ただしく華やかな町並みが、なせが息苦しく感じたからだ。

一本だけ道を変えよう。

そう思った里緒菜は、メイン通りから離れた。

すると、別世界のように道は…姿を変えた。

静まり返った町並みに、微かに悲鳴が聞こえてきた。