「く!」

顔をしかめながら、校門前に着地した乙女レインボーは、割れた眼鏡を外した。

「珍しいな」

黒のリムジンから降りた執事は、指先で眼鏡を押さえながら、スーツ姿に戻った女のそばに来た。

「君が負けるなんて…九鬼美琴くん」

そして、にやりと笑った。

「お言葉ですが…。私は、九鬼美琴ではありません。猫沢巫女です」

眼光鋭く自分を見つめる猫沢に、男は軽く肩をすくめ、

「まあ〜騒ぎはおさまったようですしね」

猫沢から視線を校内に向けた。

「では…参りましょうか」

リムジンから運転手が降りると、後部座席のドアを開いた。

「お嬢様」

男の眼鏡が妖しく、光った。

「うっ!」

嫌な顔をしながらも、リムジンから1人の少女が降りて来た。

すると、猫沢が少女の後ろに移動した。

「素敵な学園生活が、貴女をお待ちしておりますよ」

嫌味とも取れる言葉を発すると、執事は少女に頭を下げた。

「く、くそ!俺に拒否権はないのか」

少女の背中に、冷たいものが当たった。

そのまま誘導されるように、校内へと向う。

その少女の後ろ姿に頭を下げた後、男はフッと笑い、

「お気をつけて…お嬢様。いや…」

ゆっくりと背を向けてリムジンに向けて歩き出しながら、呟くように言葉を続けた。

「太陽のバンパイアよ」