「何!?」

俺は目を疑った。

アルテミアと俺の前に着地したのは、紛れもなく俺のオリジナルとなる…自分自身であったからだ。

「…」

防衛軍の軍服を着た俺が、アルテミアに向かって手を突きだした。

「チッ!」

アルテミアは舌打ちすると、後方に飛んだ。

俺の手から放たれた衝撃波は、アルテミアの後ろに聳える崖をすり鉢状に抉った。

その大きさは、アルテミアの身長の五倍はあった。

「クッ!」

腕をクロスして、防御の体勢にしたが、アルテミアの全身の肌が痛んだ。これでも、威力を流したはずだった。

「フン!」

崖に激突こそしなかったが、全身が痺れてしまったアルテミアに向かって、俺がジャンプした。

アルテミアの首根っこを捕まえ、すり鉢状に抉れた岩肌に、背中から激突させた。

「殺すなよ」

ヤーンは、楽しそうに笑った。

「あ、赤星」

アルテミアは顔をしかめ、俺の腕を振り払おうとしたが…首筋に深く入り込んだ手は、逃げることを許さなかった。

さらに力を込めると、アルテミアの体は岩肌にめり込み…そのままトンネルを掘っているかのように、穴が空き始めた。

すり鉢状態に抉れた岩肌に、さらにひびが走った。

「赤星!」

アルテミアの全身が輝き、光に包まれた。

同じく俺の体も、光で包まれていた。

「アルテミア…」

崖を削りながら、俺は腕を曲げると、アルテミアを引き寄せ、耳元で囁いた。

「!?」

しかし、何を言ったのは、ピアスの中にいる俺にはわからなかった。

俺は、アルテミアをさらに奥に押し込むと、ピアスに向かって言った。

「僕がいなくなったら、君が赤星浩一をやれ。だから、意識を一つにはしない!」

俺は、アルテミアの首から手を離した。

「アルテミアを頼んだ!」

そう言うと、俺は魔力を四方八方に放った。

「赤星!」

アルテミアは翼を生やすと、すぐに全身を覆い、ドリルのように回転し、上ではなく地下に掘り進み出した。

「うおおおっ!」

俺から放たれた魔力は、周囲の石を抉り、吹き飛ばしながら、消滅させた。