「フン」

アルテミアは鼻で笑うと、左手を光球に向けて突き出した。

「え」

光一は、目を見開いた。

自分が放った光球が、アルテミアの指先で止まっていたのだ。

「じゃあな。偽者」

アルテミアは、光球を指で弾いた。

「な!」

弾かれた光球の玉は、光一に近付く程に、大きくなっていった。

「ま、まさか…」

光一は迫ってくる光球よりも、もう自分に興味をなくしたアルテミアに目を奪われていた。

背を向けて、部屋から出ていくアルテミアの後ろ姿を見つめたながら、光一は光に包まれた。

(ほ、本物…)

光一は消滅しながら、決して届くことのない手を伸ばした。



光球は、光一を消し去った後、屋敷の天井を突き破り、空の彼方に消えていた。


「くそ」

アルテミアは廊下に出ると、指の動きを確かめた。

「やはり…この世界では、力がでないな」

まるで砂利道のようになった廊下を見つめ、

「さっさとけりをつけるか」

アルテミアは背伸びをしてから、歩き出した。