天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)

「!」

息を飲む麗菜の横を、光一はすり抜けていく。

屋上から階段を下りる頃には、麗菜のことは頭の中から消えていた。

その代わり…脳裏に浮かぶのは…。

物憂げな瞳をふせ、湖の真ん中で翼を休める…天使の姿。

いや、天使ではなかった。

黒髪に、漆黒の六枚の翼を畳んだ…堕天使。


(そうだ!俺は…あの時)

湖の木陰まで、テレポートした者は、その美しき姿に恋をした。

(世界と同じくらい…いや、それ以上に、彼女がほしいと思ったのだ)

その出逢いが、彼の夢を計画を…狂わせたのだ。




「彼は…一体?」

光一が階段を下り出した頃、やっと我に返った麗菜は、慌てて振り返った。

(やつの正体が何となくわかった…)

麗菜の頭に、美奈子の声が響いた。

(恐らく…あの体に入っている魂は、5人の中の1人)

ブルーワールドに拐われた沢村明菜を救う為に、時空の壁を越えた赤星浩一。

その数日後、クラーク・パーカーより召喚された5人の高校生。

西園寺俊弘、守口舞子、佐々木神流、松永伸介、橋本正志。


(女である舞子ともう1人は、違うだろう。さすれば…)

「待って下さい!」

美奈子の考えに、麗菜が割って入った。

「今の赤星光一は、この世界がつくったのですよね?」

(そういう説が、有力だが…。肉体は確かに、この世界がつくったかもしれないが…魂はどうだろ?ああも人間社会にすぐに、対応できるものかな)

「で、でも」

(それに、やつが魔獣因子の持ち主で、赤星浩一と同じ能力を持っているならば、この世界の神に選ばれたとしても、問題はない)

「…そうですけど…」

麗菜は、光一が消えた階段の方に目をやった。

(沢村…)

美奈子は、麗菜の本当の名字を口にした。

(あたし達の最後は近い。正体もばれたしな。今のあたし達では、光一には勝てない。だとしたら、やることは一つ)

「わかっています」

麗菜は、自分の鳩尾に手を添えた。