死んでからよみがえったティアは、祖国を訪ねていた。

内乱が終わり、安定した国は…資本主義へと近付いていた。

あれほど迫害された音楽も、自由になり…ティアが知る国とはまったく、異なる環境に変わっていた。

人々は幸せになったのだろう。

だが、だからと言って、その過程で迫害され、殺された人々は浮かばれるであろうか。

「…」

ティアは、レダを見た。

歌が始まる。

(貴女の考えていることは、わかるわ)

ティアは、レダの歌の聴きながら、ゆっくりと目を瞑った。

(だけど…今回は、あなたが死んでも、あたしが死んでも、どうにもならない。それでも、あなたが歌い続けるならば)

ティアは、目を開けた。

(あたしは、止めはしない)



「ここか」

コンサート会場の前に止まったリムジンから、俺は出てきた。

楕円形の会場を見上げている俺の横に、上月佐助が来た。

深々と頭を下げると、佐助は言った。

「お嬢様。行きましょうか」

このコンサート会場は、開八神家が出資して建てられていた。

さらに、俺の命というか…レダが所属する会社の筆頭株主に、今朝なってしまった。

会えないならば、絶対会えるようにしてやると、軽い気持ちで、俺が言ってしまったからだ。

数時間後には、そうなっていた。

佐助に先導されて、俺は関係者専用出入口に案内された。

前に立つ警備員に、佐助が何やら説明すると、俺はすんなり通れるようになった。

「では、お嬢様。わたくしは、ここでお待ちしております」

佐助は出入口の前で、頭を下げた。

「いってらっしゃいませ」
「は、はい」

俺は1人、関係者だけが通れる通路から中に入った。

(でも、アポたしだよな。良いのかな?)

迷っていても仕方がない。

話せなければ、使った金が無駄になる。

少し常識がないけど、俺は楽屋の前で待つことにした。