ブルーワールドと実世界は、対極にあり…一方は魔法、一方は科学と発展の仕方が違うと思っていた。

しかし、そんな単純なことではないと、今は知っていた。

(月の女神は、この世界を人間の為に創った。魔物がいない安全な世界として。しかし、ブルーワールドを基本とした為に、魔物がまったくいなくはできなかった。それでも、圧倒的に少なかった故に、魔法ではなく…科学が発展した)

俺は、廊下から外に目をやった。

科学が発展した実世界とは言わば、消費の世界と建設の世界だと思う。

大量につくり、大量に消費する。

しかし、それができるのは…人間がこの世界の支配者であるからだ。

ブルーワールドでは、魔物に破壊されることが多い。

だからこそ、結界を張り…その中で町をつくっていた。

(初めてブルーワールドに行った時は、この世界とあまり変わらないと思っていた。しかし、根本的に違っていたんだな)

そんなことを考えながら、無意識に歩き出していた俺は…いつのまにか、廊下から中庭に出ていた。

「うん?」

ふっと目が中庭から、グラウンドに向いた。

練習を終えた男子生徒達が、引き上げてくるところだった。

その中に、赤星光一がいた。

同じ目線で、彼を見ると…やはり、鏡に映っているようだった。

(俺の偽者)

しかし、世代が違う。

思わず見つめてしまった俺の視線に気付いた光一は、微笑んだ。

(!)

自分の微笑みを客観的に見ると、気持ち悪い。

光一は微笑みながら、俺に近付いてくる。

「やあ〜アダム」

すれ違う寸前、光一は俺だけに聞こえるように、微かな声で言った。

「!?」

意味がわからずに、驚く俺の横を、にやけながら、光一は通り過ぎた。





「赤星。あのお嬢様を知ってるのか」

話しかけたことはわからなかったが、光一が開八神茉莉に微笑みかけたことは、回りにいた生徒達も気付いていた。

「ああ…知ってるよ」

光一は笑顔で頷き、最後の言葉は心の中で呟いた。

(生まれる前からね)