理香子の言葉に、高坂は言葉を失った。

女神が勝てない相手に、人間である自分が敵う訳がなかった。

(しかし…)

高坂の脳裏に、空を切り裂いた開八神茉莉の姿が浮かんだ。

(彼女なら…)






「その件ならば、調査中だ」

数日ぶりに、開八神家の屋敷に戻ってきた真田に、俺は詰め寄っていた。

「待てよ!仮にも、お嬢様である俺が、あんなところに招待されたんだぞ!何とも思わないのか!」

どこぞの宮殿を思わせるフロアは、一面大理石で覆われており、床には赤い絨毯がひかれていた。

真田の後を追いかけても、すぐに行き止まりになることはない。

フロアから奥の廊下に入ってもついてくる俺に、真田は頭を抱えた。

「やつらは何者なんだ!」

俺の質問に、真田は振り向くことなく、同じ言葉で答えた。

「調査中だ」

「待て!」

俺は後ろから、真田の肩を掴もうとした。

その瞬間、誰かが間に割って入ってきた。

「!?」

驚く俺。

「フン」

真田は鼻を鳴らすと、

「お嬢様は、お暇なようだ。相手をしてやってくれるか。才蔵」

割って入った者にそれだけを伝えた。

「誰だ!」

俺の前に現れたのは、黒のスーツを着た細身の男だった。

才蔵と言われた男は、真田の言葉に頷くと同時に、崩れ落ちた。

「いけね!」

俺は慌てて、後ろに下がった。

無意識の掌底が、才蔵の登場と同時に鳩尾に打ち込まれていた。

「ご、ごめんなさい」

踞る才蔵に、少し女ぽく笑顔で謝ると、俺は真田の後を追おうとした。

しかし、廊下に真田の姿はなかった。

「チッ!逃がしたか」

俺は舌打ちすると、踞っているはずの才蔵に目をやった。

だが、才蔵もいなかった。

(ここの奴等は、何者だ?普通の人間じゃない)

再び舌打ちすると、俺は今来た廊下を戻った。