「あ!」

里奈は、その女子生徒を指差し、

「乙女ピンクが逃げる!」

叫んだ。

こうなったら、巻き添えがほしい。

鞄を抱き締めていた竜田桃子は、足を止め…びくっと体を震わせた。

「あ、あたしは…」

そして、目を瞑ると、再び走り出した。

「乙女ピンクじゃありませ〜ん!」

しかし、その前を戦闘員が塞いだ。

「貴様が、乙女ピンクか!」

黒タイツの男は、拡声器を桃子に向け、

「お初にお目にかかる」

嫌らしく口角をつり上げた。

「だから!あたしは!」

桃子が反論しょうとした時、道を塞ぐ戦闘員の後ろから巨大な何か飛んで来て、ぶつかった。

前のめりに倒れる戦闘員達。

「魔神カマイタチ!?」

戦闘員にぶつかったのは、気絶したカマイタチだった。驚く黒タイツの男の目に、桃子達の上を飛び越える黒い影が映る。

「乙女ブラック!九鬼真弓か!」

目の前に着地した乙女ブラックを苦々しく、黒タイツの男が睨み付けた。

「どいつも、こいつも…九鬼、九鬼と…」

乙女ブラックのサングラスが、光る。

「九鬼真弓!お、お前のせいで、私は目立たなくなったのだ!」

黒タイツの男の指差す指が、小刻みに震えている。

「月の女神を守るヒーロー!半月ソルジャーが、貴様のせいで!」

「フン」

乙女ブラックは鼻を鳴らすと、髪をかきあげ、

「ヒーロー?知らんな。そんな下腹が出たヒーローなど…」

じりじりと間合いを詰めていく。

「九鬼真弓!今日がお前の命日だ!結城里奈の前に、殺してやる!」

半月ソルジャーは、タイツの中に手を突っ込み、ナイフを取り出した。

乙女ブラックは目を細め、

「死ぬのは、お前の方だ。あたしを愚弄した報いは、死ぬことでしか償えない!」

両手を広げた。

すると、足元に風と光が集まって来る。

「ムーンエナジーか!」

その光に、半月ソルジャーは後退った。

「死ね!」

そのままジャンプすることなく、空中に浮かぶと、体を捻った。

「ブラックキック!」

「ひええ!」

半月ソルジャーは頭を抱え、踞った。