「さようなら」

レダの前にいた女が振り返り、微笑んだ。

「!?」

その顔を見た瞬間、俺の全身の力が抜けた

「ティアナさん!」

底が見えない穴になった会場から、俺は落下した。

だけど、回転する2つの物体が穴の底から飛んできて、合体すると足場になった。

「どうして、ティアナさんが!」

チェンジ・ザ・ハートの中心に立つと、俺は叫んだ。

「残念だけど…あたしは、ティアナではないわ」

狼狽えている俺に微笑むティア。

しかし、俺には…ティアナさんにしか見せない。

「あなたは、勘違いしている」

「馬鹿な!」

またま納得できない俺の肩に、後ろから誰かが手を置いた。

そのまま、俺の肩を弾くと、前方に飛んだ。

「!?」

ティアは、目を見開いた。

なぜならば突然、目の前にドラゴンキラーの切っ先を向けたサーシャが飛び込んで来たからだ。

サーシャはドアからジヤンプすると、俺の肩を中継にして再び飛ぶと、ティアに襲いかかったのだ。

「サーシャさん!」

足場のないはずの穴の中央で、普通に立つ3人。

一番近いティアの胸を、ドラゴンキラーは突き刺したはずだった。

しかし、現実は違った。

ドラゴンキラーは、ティアの前に回ったレダの左腕に止められていた。

「何!?」

驚くサーシャの耳に、モーターが回るような音が響いて来た。

その音を聞いた瞬間、俺はサーシャに向かって叫んだ。

「逃げて!」

「チッ!」

サーシャは舌打ちすると、レダの腹を左足で蹴って、後ろに飛んだ。

着地した瞬間、会場は元の状態に戻った。

しかし、サーシャの左足の爪先と、ドラゴンキラーを装備していた右腕がなくなっていた。

「く!」

顔をしかめたサーシャの右腕と、左足の先から砂が零れ落ちた。

「砂?」

その様子を見た直樹は、目を丸くした。

しかし、それよりも、驚くことがあった。

「オウパーツ!」

高坂は、絶句した。

目の前に立つレダの左腕に、オウパーツがついていたのだ。