「ま、まさか…こんなところに来るなんて」

華やかなパーティー会場で、1人浮いてるように感じていた飯田直樹の横で、小太りの紳士と談笑を終えた天城志乃は、ため息をついた。

「単なる自慢の見せ合いよ。金と暇をもてあました奴らのね」

各々に着飾った姿を、高貴と見るか…滑稽と思うか。

「そして…この場で、最高のデコレーションのご登場よ」

作り笑いで笑い合う人々の声が、歓声に変わった。

「レダ…」

会場に現れたのは、歌姫…レダであった。

ステージ上では、大きく見える彼女は…同じ目線で見ると小さく見えた。

早速、彼女に群がる人々。

その姿はすぐに、見えなくなった。

直樹は、手に取っていたワイングラスを置くと、人混みを見つめ、

「しかし…まだ、彼女はデビューしたばかりの新人でしょ?こんなパーティーが開かれるなんて…」

「そんなことはないわ。それだけ彼女に、魅力がある。そして…金の匂いがするのよ。ここに集まった奴等は、そういうのにだけ鼻がきくのよ」

少し吐き捨てるように言った志乃は、口直しに、グラス内のワインを飲み干した。

そんな2人から離れたテーブルに、2人の外国人がいた。

「ウフフ…」

レダに群がる人々を見つめながら、妖しく微笑んだのは、ティアだった。

「いつ見ても面白いわね。金に成る木に群がる…金ずる達」

「そうだな」

1人に立つジャックは、にやりと笑うと、煙草に火を点けようとした。

「ジャック」

「あっ…そうだったな」

ティアのたしなめる声に、ジャックは手を止めた。

煙草をスーツの内ポケットにしまうと、顔をしかめた。

「死んでから…金への執着や食欲もなくなったのに、煙草だけ手が伸びやがる」

「それが…あなたの魂に刻まれている習慣なんでしょうね」

ティアはジャックから目を離し、レダの方を見た。

「大したことないな。俺も」

ジャックは苦笑すると、ティアの横顔を見つめ、

「ところで〜あんたの魂に刻まれているものは、何だい?それに…この世界に戻った理由も知りたいねえ」

にやりと笑った。