その瞳の強さに、高坂は理解した。俺が、そのカードを知っていることに。

だから、素直に本当のことを口にした。

「残念ながら…このカードにはポイントがない。使えるのは、通信機能だけだ」


カードシステムとは、ブルーワールドでティアナ・アートウッドが考案、開発したものであった。

魔王ライにより、妖精や精霊が住めなくなった世界では、人間は魔物を使えなくなった。契約できないからだ。

そんな状況を打破する為に、カードシステムは作られた。

倒した魔物から魔力を奪い、それを使役する為に。


(そうか!この世界には、魔物がいない。だから、ポイントを貯めることができないんだ)

ポイントとは魔力である。

そんなことを真剣に考えている俺の顔を見て、高坂が口を開きかけた。


「君は…一体」

しかし、最後まで話すことはできなかった。

いつのまにか…校門前に着いていた。

「お嬢様」

黒いリムジンが校門前に移動すると、小柄の男はドアを開き、深々と頭を下げた。

その行為に邪魔された形になった高坂は、口をつむんだ。

3人がリムジンに乗り込むと、前の席に小柄の男が座った。

ゆっくりと発車する車の揺れに、身を委ねながら、俺は先程の月影の騒動を思い出していた。

(仮にも女神であるものを、瓶の中に封印する相手がいるとは…)

俺は、それが気になっていた。

しかし、その封印した相手は、あの場にはいなかった。

(神レベルの…それも強力な相手がいるな)

俺は確信した。




「…」

リムジンの広い車内の中でも、高坂は気を許してなかった。

どこか…落ち着かない雰囲気があった。

サーシャは、車内に入ってからずっと、目をつぶっていた。

「ふぅ〜」

高坂は軽く息を吐くと、まだ手に握り締めていたカードに目をやった。

「!?」

何と、カードの反応が消えていた。

(まさか)

高坂は、カードを握り締めた。

(まだ使える場所が限られているのか。すると…完全に繋がった訳ではないのか)



3人を乗せた車は、市街地を抜けた。