「大丈夫?」

足を下ろすと、スカートの乱れを直してから、理香子は振り返った。

「あ、あたし…。美人は、頭が悪いと決めつけてた」

里奈は、理香子を見つめながら深呼吸をした。

「どんな偏見よ」

理香子は、顔をしかめ、

「それに、さっきの基本問題でしょ」

「聞きたくたい!」

里奈は耳をふさいだ。

「まったく…」

理香子が呆れていると、廊下の向こうから、男子生徒が駆け寄って来た。

「相原!」

「中島!あんたは、避難してって言ったでしょ!」

学園一の美人ありながら、彼女が好きな男は、冴えないオタクぽく男。

(まあ〜彼氏があんなんだから、少しはバランスがとれてるかな)

と失礼なことを考えた里奈を、いつのまにか理香子が睨んだ。

(ひぇ〜忘れてたよ!こ、この子は、月の女神の生まれ変わりだったんだ)

ガクガクと震え出す里奈に首を傾げた後、中島は言葉を続けた。

「グラウンドで叫んでいるやつは、月の使者と言ってるけど…何かあったの?」

「うん?」

理香子は里奈から目を離すと、廊下の窓からグラウンドの方を見て、

「あんなやつ知らないわ。月の使者だなんて、勝手に!?」

そこまで言ってから、理香子は眉を寄せた。

「空気がおかしい?」

「そりゃあ〜そうでしょ。変態達が暴れているんだから」

呪縛から自由になった里奈は、肩をすくめて見せた。

「違う!ここだけじゃない!」

理香子は慌てて、窓ガラスを開けると、空気を吸った。

「何かが起こっている!?」





「…で、どうします?」

「…」

「ここ実世界ですよね?魔法が使えないのは、わかりますけど…あんな変なのがいるんですか?」

プールから移動したヘビイチゴが、中庭を徘徊していた。

「どうします?部長」

「そうだな」

しばらく考え込んでいたのは、情報倶楽部部長高坂真であった。

その右にいるのが、中小路緑。左にいるのが、犬上輝である。