人間が繁栄することのできない極限の景色に囲まれながら1人、目を瞑る少年の名前は、赤星浩一。

そんな彼の後ろに、突然来訪者が訪れた。

「すまないね。こんなところに呼び出して…。あまり人目につきたくなかったからね」

来訪者は白い息を吐きながら苦笑すると、周りを見回し、

「だけど…行き過ぎかな?」

頭をかいた。

アルプス山脈の一番高い山頂に立つ2人。

周囲は、万年雪と…空に青空しかない。



「いえ…」

数秒後、ゆっくりと目を開けると、僕は目の前の景色を見つめ、口を開いた。

「問題はありませんよ。ジャスティンさん」

そして、笑顔を作ると、振り返った。

その無垢な笑顔に、ジャスティンは少し驚いた後、微笑み返した。

「こんなところに呼び出して、簡単に来れるやつはいないからね。それに、空気が旨い」

ジャスティンは深呼吸した後、山脈の奥に目をやった。

そこは、魔界の入り口であった。

「アルテミアは元気かい?僕の立場だと、あまり会うことができないからね」

防衛軍の総司令であるジャスティンが、魔界を統べるアルテミアと会うことはない。

「元気ですよ。最近はあまり、会っていませんけど…」

そこまで言ってから、僕は思わず笑ってしまった。

「本人は、外に出たいようですけども…ギラにサラ…それに、カイオウが止めているようですよ。何でも、真の王になる為の教育が必要だとか」

「そうか」

ジャスティンは魔界にある城の方を見つめ、

「彼女にはいい経験になる」

さらに微笑んだ。

再び数秒の余韻の後、ジャスティンは僕の方を向くと、ここに呼び出した理由を話し出した。

「赤星くん。君なら、何か知ってるんじゃないかと思ってね。数日前、空から人が落ちてきた。それも、百人だ。たまたま、海に落下した為に、助かったものもいた。しかし、落下の恐怖と突然の環境の変化から、パニックになっている者が多くてね。まともに話を聞けていない。しかし、彼らの断片的な話から…この世界の人間でないことが確認された」