「蓮〜いるんでしょ〜?開けてよ〜!」



けたたましく鳴り響くドアを叩く音に、俺の意識が戻る。


「れ〜ん〜」


ドンドンと不快な音を立てて、俺を呼ぶのは誰でもなく隣に住んでいるなつめだ。


鳴り止みそうにない気配に、俺は仕方なくベッドから飛び下りる。


そして勢いよくドアを引いた。


「キャッ!ちょっとぉ!いきなり開けないでよバーカ」


突然ドアが開いた反動で、前のめりになつめがよろけて。


キャンキャンと騒ぎ立てるなつめに、耳を塞ぎたくなる。


「お前こそいきなり人ん家来て騒いでんじゃねぇよバーカ」


寝起きのせいか、いつも以上に声が低い。


「ムッカつく!何でいつもそんなに偉そうなわけ?」

「は?意味不明。わざわざ喧嘩しに来たの?っていうか、帰れよ」


「…やだ」


なつめはふいっと目を逸らして俯く。


「帰れ」


「やだ」


「帰れっつってんだろ!?」


「いーやーだーあっ!」


俺以上に声を荒げたなつめの声が、家中に響いた。


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