「だってさ」

結城くんはそんな私にクスクス笑いながら言って。

佐々木くんは何やら曲を入れてマイクを握った。表示されたのは、国民的人気アイドルのヒット曲。
ソファの上に立って、躍りながら歌い出すと皆お腹を抱えて笑った。

楽しくて、こんなに笑ったのは久しぶりかもしれない。

忘れられない素敵な誕生日となった。




「楽しかったなー」

帰り道、結城くんと手を繋いで歩いていく。
お昼から遊んでいたけれど、もう日はすっかり落ちていて空は真っ暗だ。

月がほんのり遠くで光っている。


「よかったな」

「うん。結城くんの歌も聞けたしねー」

そう言うと、彼はバツが悪そうに顔を曇らせた。

「…もう歌わない」

「えー?!いいじゃん、音痴だって」

そう。結城くんの弱点をまた見つけてしまったのだ。

歌が苦手らしく、無理矢理歌わされた結城くんの歌声を聞いて。

優花も佐々木くんも、目を見張った。


「蓮ちゃん、音痴や…」


そうボソッと言った佐々木くんの頭を優花が思いっきり叩いて。


「バカ!カラオケはそういうもんなの!」

わざわざマイクを使って耳元で怒鳴っていたっけ。

「優花だってそう言ってたし、カラオケは上手い下手じゃないって」

「でもいい。歌わねぇ」

「いじけてるー」

いつも冷静な結城くんが、子供のようにいじけている姿を見て私はケラケラと笑う。

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