「ビックリし過ぎて挨拶出来なかった…」

「私も…なんか、ごめんね」


お母さんのバカ…

この空気、どうしてくれるのさ。

「お母さん帰ってきたし、帰るか?」

「うん…」


しゅんとする私に、結城くんは優しく笑って髪を撫でて。
煌々と光る外灯から離れた場所に私を連れ出した。

私はポカンとしたまま、彼を見上げる。

「また、明日な」

そう言って私の唇に、彼の唇が重なった。

春風のようにやわらかくて、優しくて。

時間が止まってしまえばいいのに。

私、彼に出逢っていなかったら今頃どうしていたんだろう…


帰っていく彼が見えなくなるまで、私はずっと見送った。


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