「迷惑だって言ってんのよ」
「さとりがいつあんたに迷惑かけたっての?!」
二人の言い合いに周りが静まり返る。
皆ポカンとしたまま、これから何か面白いものが見られるとでもいうように。
好奇の眼差しだ。
「辞めろよ、本鈴鳴るし」
いつの間に、結城くんが立っていて。
皆が黙ったままそれぞれの席についた。
優花が、私のために言ってくれたのはすごく嬉しいけれど…
新学期初日から問題を起こすわけにはいかない。
「もうー!本当何なのあの女!」
昼休み。優花と私そして佐々木くんと結城くんの四人で中庭でお弁当を広げる。
「落ち着いて、優花!私は気にしてないから」
「女同士の争いは恐いなー…」
「あたしが気に食わないのよ」
優花は本川さんにかなりご立腹だ。
箸を乱暴に突き立てて、プチトマトを勢いよく刺した。
「優花ちゃん汁が…飛んできた」
「そんな所にいるからでしょ?」
「さとりが気にしてねぇならいいんじゃねぇの?松川が怒らなくても」
ずっと黙ってお弁当を食べていた結城くんが、私と優花を交互に見て言った。
いつだって冷静な結城くん。私はほっとして微笑み返す。
「そ、そうそう。優花の気持ちはすごく嬉しいよ。でも大丈夫だから」
「れんにょんはっこいい」
「お前は食ったまま喋んな」
結城くんに頭を叩かれて、佐々木くんはこくこく頷いた。
「分かった。でも、何かされたらあたしが許さないから」
「ありがと」
私はその気持ちだけで、充分幸せだよ。
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