「も、もしかして…奢りってやつですか?」

「いいよ、こんくらい」

「ありがとう」


彼は涼しい顔して食券をカウンターへ出した。
カウンターの中にいるおばちゃんも目を見張るほど、結城くんはここでも不動の人気っぷりを見せる。

「兄さん男前やから、サービス」

「どうも…」


ず、ずるい!

結城くんが頼んだ味噌ラーメンには、チャーシューが五枚も入っていた。

「ふっ、そんな恨めしそうな顔しなくてもやるから」

「べっ別に恨めしそうな顔なんて…」


恥ずかしい。

結城くんに笑われた。落ち込んでいる間にも結城くんは、タイミング良く空いた席にトレーを置いていて。

「麺伸びるだろ?」

早く座るように私を促した。
私はトレーを置いた後、コートを脱いで座る。
結城くんはそれに気付いたのか、瞳を和らげて私を見た。

「ネックレス、してる」

「うん。お気に入りだよ」

目立つようにと、中のトップスはシンプルなアンサンブルにしたんだ。

「良かった、ちゃんとしてくれてて」

彼は優しく笑って視線を落とすと、割り箸を割ってチャーシューを私のラーメンに入れてくれた。


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