次の日。私の下駄箱から上履きが無くなっていた。

ごみ箱の中にも、周辺にも見当たらない。私は仕方なく職員室でスリッパを借りて教室まで向かった。

「ブース」

「死ねばいいのに」

聞こえてくる声は、段々と憎しみの言葉に変わっていて。耳を塞ぎたくなるような衝動に駈られた。

冷ややかな視線。
なんだか学校全部が敵みたいに感じてしまう。

それからも誰がやっているのかは分からないけれど、些細な嫌がらせは続いた。

中には身に覚えのない噂も広がっている。

無視していればいい。そうすればいつかは忘れられるだろうって、言い聞かせていた。

だから何でもないように笑って。
優花やなっちゃんと、いつも通りふざけて。


けれど、私の心がじわじわと蝕ばまれていく。
傷だらけになっていく。

"大丈夫"が口癖になっていた。

私、ちゃんと笑えてるのかな?

何だか感情が空っぽになってしまったように、空虚で全部が色褪せて見えるんだ。

聞こえてくるのは、嫌な言葉達ばかり。
それがいつまでも頭の中で繰り返される。

「…さん、小田切さん?」

「はいっ」

「次の所から読んで」

授業中、険しい顔した先生は教科書を読むように私に促した。

「えっと…」

全く聞いていなかった私は、分かるはずもなく。

「148ページの6行目」

困っていた私に、小声で教えてくれたのは隣の席の北川くんだった。


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