「今まで何してたの?」
「ん…ベンチで寝てた」
「えっ…もしかして待ってた…?」
「まあ…」
そう言われるとこっちが恥ずかしくなる。
「ありがとう…すごいビックリした」
「いや…。今日サッカー部やめてきた。その帰りにお前を体育館で見たからさ…」
「やめちゃったの?」
彼女のくりっとした大きな瞳が俺を見上げた。
「あぁ。全く顔出してないし、中途半端だから」
「そっか。じゃあ帰宅部?」
「そういう事になるな」
そう言う俺に、彼女は少し悲しそうに頷く。
いいんだ。
元々集団行動が苦手な俺に、チームプレーなんてできない。
「…手、寒くないか?」
「うん、だいじょう…」
言いかけた小田切の手を強く握った。
「冷てぇじゃん」
ひんやりと氷のように冷たい小さな手。
自分から誰かの手を握った事なんて、きっと初めてかもしれない。
「…結城くんはあったかいね」
「心が冷たいから」
そう言って、俺は目を細めて笑う。
「そんなの関係ないよ〜」
この手を繋いで、ずっとずっとどこまでも歩いていける気がした。
空高くに、キラキラと輝く無数の星を見上げて。
強くそう思ったんだ…。
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