下駄箱近くのベンチに座っていた俺は、部室棟の方へと歩き出す。



彼女はもう帰ってしまったかもしれない…


気温が下がり、ブルッと背筋に悪寒が走った。



「あ…」


友達に手を振りながら歩いていく後ろ姿。


綺麗な長い髪が風に揺れて靡く。

俺は急いで校門を出た。



「小田切」


俺の呼ぶ声にビックリしたのか、彼女の肩が真上に上がる。



「ゆっ…結城くん?!」


両手で携帯を持ったまま振り返った彼女の顔は、やっぱり驚いた顔をしていた。



「送ってく」


「えっ?えっ?」


髪を耳にかけながら、まだ状況を理解していないようで。



「…送るってば」


もう一回言うと、パタリと携帯を閉じた。


「今メール送ろうと思ってたんだ」


「何て?」


「え…ん〜と、初メール的な」



そう言う彼女に、俺はフッと笑みをもらす。



「じゃあ今送ってよ」


「ほほ本人がいる前だと、恥ずかしいだもん」



彼女は緊張すると言葉を噛むようで。


「そっか」



噛み加減はいつも期待を裏切らない。


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