目の前で繰り広げられている光景に、ただ見ていることしかできなかった。


結城くんは…


結城くんは…


いつも私を助けてくれるね…。



「ちっ、結城蓮覚えとけよ」



男の声にはっと顔を上げると、脇腹を抱えて去っていくところだった。



「結城くんっ?!」



慌ててかけ寄っていく。


彼はぺたんと座りこんで、空を仰ぐ横顔には赤が滲んでいた。



「大丈夫?!」


口元が切れていて。

頬も赤く腫れていた。



「あぁ、たいしたことない」


「でも血が…」



スカートのポケットからハンカチを取り出して差し出す。


「悪いな、お前こそ大丈夫か?」


「うん…本当にごめんなさい」


苦しくなって、俯いた。

涙がじわっと込み上げる。


「謝るなよ。何もされなくて良かった」


ポタリと涙が散った。

結城くんが来なかったら、どうなっていたんだろう。


そう考えたら、再び身体が震えた。



「…ありが、と…」


「小田切…」


「え…」



突然の事に、声が掠れた。


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