少しして戻ってきた手には、お粥が載ったお盆。
「ほら、食べな。」
「ん。」
体を起こそうとしたら、さっと背中に手を回した。
「ほい。熱いぞ。」
膝に載せてくれたお盆。
「メロンは?」
「お粥、食べたらな。」
メロンが食べたいのに。
「おばさん、せっかく作ってくれたんだから少しでも口つけろよ。メロンなんかいつでも食べれるだろ。」
君が買って来てくれたメロン。
せっかくだから、一緒に食べたかったな。
熱そうな卵の入ったお粥。
これ、美味しいんだよね。
食べなきゃね。
「あつっ。」
でも、やっぱり美味しい。
「じゃ、俺行くわ。」
窓から帰るつもりらしく、迷わず窓に向かってる。
「濂ちゃん。」
「ん?」
足はもう窓枠……。
「メロン、ありがと。」
「おぉ。それ、ちゃんと全部食べろよ?」
お粥を指差した。
「落ちるよ?」
「じゃあな。」
ひょいっと飛び越えて行ってしまった。
お互い、質問には全然答えないまま。
こんな時間がどんどん減っていく。
当たり前だったものが、当たり前じゃなくなっていく。
お粥が胃の中に熱いまま、落ちていった。

