暖かな光から
鼻緒が切れた草履に
割れてしまった洗濯板に灰だらけの七輪
穴が開いてしまった網
様々な道具の一行が
こちらに向かってくる。
みつるとみずきは
耳をすました。
道具達が
楽しそうに
話しているのが
聞こえる。

「これはこれは草履さん。あなたも人間に大切に使われたみたいですね」

「ええ、鼻緒が切れても切れても何度も付けてくれたんですよ。洗濯板さんも、大切に使われたんですね」

「長年、私を必要としてくれた事に、本当に感謝しています」

嬉しそうに
話しているのが
あちらこちらで
聞こえる。
そして森の奥に
消えて行った。

消えるまで
まるで見送る様に
九十九神を
見つめる親分。

「大切に使われた道具には魂がやどり、定めを果たすと、この森に帰ってくるんだ。この森は出発であり、帰ってくる場所でもあるんだ。」

親分が
話終えると
大粒の雨が
ポツンボツンと
降ってくる。

「そうだ。みつるとみずき。せっかく来たんだ。オイラが、この森を案内するよ。」

カワザエモンは
得意げ言う。
みつるとみずきは
目をキラキラと
輝かせた。

「ドキドキするね」
「うん!!ドキドキする」