二人でサイゼリアでご飯を食べていた時のこと。
『ねぇシオン。話があるんだけど』

「何?」

拳を握るようにスプーンを持ちミラノ風ドリアを掻きこむ彼に思わず

『スプーンの持ち方おかしくない?』

「聞きたいことってそんなことなん?俺ちゃんとスプーン持てへんねん。子供みたいで可愛いやろ?」

いやいやドヤ顔で言ってるけど、唇にソースついてるから。可愛いとかそういう以前にお前は二十歳過ぎたいい大人だろ。

『可愛くないけど』

何でなーんと騒ぎ立てるシオンを制して本題に入る。

『てかさぁ何で付き合ってるのに店に行かなきゃなんない訳?おかしくない?ホストでもないのに』

「俺なバンドの作曲とかスタジオとかリハばっかでプライベートの時間殆どないねん。だからな、バイト先ではせめて一緒にいたいねん。」

『そんなんじゃお金持たないし、大体客と変わんないじゃん。やだよ』

「そんなこと言わんと。バーで売上上がったらその分、時給も上がるし早く二人で暮らせるやん。使ってくれたお金はその分で返すし。」

『うーん』

「な!お互いの為やん。俺達付き合ってるんやろ。助け合うのが恋人とちゃうん?お願いや』

どうしてあの時、彼の言葉を信じてしまったのだろう。どうして疑わなかったんだろう。思い出せば自分が浅はかで仕方がない。

その後も、毎度毎度嫌だという度にシオンに丸めこまれる形で店に通い続けた。

30万くらいは使ったと思う。