その後、何日かネットで以前から交流があった関西の友達と遊んだりシオンのバ-に行ったり満喫巡りをしたりした。

今、思えばシオンの働いていたバ-はベラボーに高かった。いわゆるぼったくりバ-。

カクテルとかは普通のバーとさして変わらないけれど、ボトルを入れたりフードを頼んだりすれば下手なホストより高かった。

その時の私には7桁以上の残高があったし、何よりもシオンにのめり込んでいた。

アルコールマジックや妖の恋から醒めた今では、ほんと馬鹿だったなと当時の自分を笑い飛ばすことが出来るが
あの時のあたしは関東を逃げるように捨てたことで自虐的な部分もあったし、金がなくなれば稼げばいいしという楽観的スタンスだった。

キャリー一つで全く知らない土地。
日本なのに、まるで異国に来たよう。

この先どうしよう。そんな疑問が頭をもたげる度、シオンの懇願するような瞳が浮かんだ。この街で生きよう。簡単にそう決意した。

前の店も電話一つで辞め、後は身分証と荷物を取りに一度東京に戻るだけ。
母からの電話も無視していたし、帰って母がマンションの前で待ち伏せしていたらと思うと怖くて仕方なかった。

家族を裏切る背徳。新しい街への曇りない期待。
後ろ見たさとスリルを感じながら、再び新幹線の改札を通ったのだった。