その後、しなびたレタスが印象的な程まずいホテルのモーニングを食べて二日酔いの頭を覚ましにシャワーを浴びてシオンが代わりにバスルームに入ってから、化粧を始めた。

TVをかけながら、どこのチャンネルもニュースでばかりで、どれも皆違うイントネーションに違和感を覚えた。
関西人のしゃべる標準語だからだろうか、自分が訛りを知らない地域で育ったからだろうか、方言というものがあたしには今一ピンと来ない。

化粧を終わり、アイロンのスイッチを入れたところで、シオンが出てきた。

「レイちぇる終わったら俺もアイロン貸してー!」

今までヘアアイロンを使う程の長髪の男とは付き合ったことないけれど、そう言えばシオンは鎖骨まで襟足と前髪がアシンメトリーに長い白に近い金で羨ましくなるくらいの猫毛だった。

アイロンが必要なのも頷ける。つーか必需品なら持ち歩けよ。もしかしたら泊るつもりで服の替えも持ってこなかったのだろうか。

携帯もなく手持無沙汰なあたしは、結局なじめない抑揚のニュースをなんとなく見ていた。

その後、二人でホテルを出た。
記憶から抜け落ちたSEXから一転得体の知らない女とのバトルで起されるし既にあたしは俺の女呼ばわりだし、シオンのペースに飲み込まれたままだ。

『ねぇーどこ行くのー?』
鬱陶しいスカウトやキャッチを縫うようにして完全スルーしながらあたしの4歩前を行く背中に叫ぶ。

「どこって携帯買いに行くんやろー?電気屋に決まってるやん。レイちぇる遅いねん」

行き先も告げずに、スタスタ先を行ってトランクを持って初めての土地を歩くあたしに遅いんだなんて、本当に自分勝手な男だ。