「お前最近仕事何してんの?」

そんな事知ってるくせに、ミオは白々しく聞きながらパソコンデスクの前に腰かけた。

狭い部屋のベッドで向かい合って座っているヒカルの顔を蛍光灯が青白く照らしていた。

「キャバの送迎」

「それ仕事になんの?」

「…なるだろ」

嘲笑った様にミオが聞いたから、ヒカルの表情も急に険しくなった。

「で、金がないからレイに頼るってか」

「そういう訳じゃないけどさ」

鼻で笑うミオ。語尾を濁すヒカル。

部屋の空気がどんどん重くなっていく。

あたしは俯いてウィスキーを一口飲んだ。

また身動きがとれなくなりそうで、涙が止まらなくなりそうで顔を上げれなかった。

「実際レイに食わせてもらってるようなもんだろ」

「んな事お前に関係ねぇーだろ」

吐き捨てるようにヒカルが言った。

「関係なくねぇーよ」

「何でだよ」

「レイは俺のもんだから」


決め台詞な筈なのに、ミオはどうしてこうも厨二病臭いんだろう。


「レイちぇるどういう事?こいつと付き合ってんのかよ」

その言葉に声が出せずにいると、ヒカルの口調は荒さを増した。

「なぁ答えろって!聞こえてんだろ。レイちぇる!」

掴まれた肩が痛くて、前髪の隙間から覗いたヒカルの目は血走っていた。

詰め寄られると、怖くて涙が止まらなくて

あたしはただ

『ごめんなさい…ごめんなさい』

と弱々しく繰り返す事しか出来なかった。




「ヒカル。いい加減にしろ。もういいだろ」


ふと目を上げると、ミオが相変わらずの眼差しでヒカルを一瞥して止めていた。