生憎、ガス欠にもならずヒカルはやって来た。

酒とタバコを持って部屋の隅にすかさず逃げる。

「お邪魔しまーす」

「おう。よく来たな」

普段この部屋では聞こえない声。慣れ親しんだヒカルの声。


今はそれが冷たくあたしに染み渡る。指の先から頭の奥にメンソールが突き抜ける様に冷やしていく。


一回り外から聞こえている声があまりに当たり障りのないものに、小さな苛立ちを感じながら。