知り合いのスカウトの紹介で、あたしは歌舞伎町に舞い戻た。

久しぶりのネオン。懐かしい喧騒。

でも新しい世界は、まるで違った。

きらびやかに見える世界。

「で、前は何やってたの?」

面接をする黒服が改めて聞く。

『デリヘル、箱ヘル。』

そう。あたしに水商売の経験は皆無。

だってずっと体だけ求められてきた。

結局男なんて穴があればどこでも突っ込むんでしょう?

それがその時のあたしの自論だった。

「接客の仕方は後で説明するから、セット行こうか」

『はい』


セットサロンなんて、今まで行ったことなかった。

風俗嬢は撮影意外、よほど髪がボサボサでない限りセットは必要ない。

大抵、巻いても一緒にシャワー浴びてる時に湿気で取れる。



「源氏名、どうする?」


もう売れっ子風俗嬢リカの自分は忘れたかった。


過去を消そうとするならば、新しい記憶で塗りつぶすしかない。


『レンで。』