初めて勇に触れられた瞬間だった。
 背中から、勇の手の力強さが伝わってきた、、。
「勇君、、、恋人は?」
 勇は鼻でわらった。
「もちろん、、、この形りじゃぁ。」
 どうしってって聞こうと思ったけど。それはとても酷な質問に感じた。私はなんてデリカシーのない人間なんだろう、、。
「美鈴ちゃんは?」
 少し言いよどんだふうだったけど、勇は逆に私に質問を返した。
「私?今はいないよ、きっとこれからも。もう誰かを好きになることなんて出来ないと思う。」
「辛いことが、あったの?」
 私はだまって頷いた。
「ねぇ。前に旅をしたって言ったでしょ?その時の写真ないの?」
 自分から振り出した話なのに、私は話題を変えようとした。
「あるよ、、、。あるけど、、、。」
「みたい。」
 勇は少し躊躇した様子だったが。
若干無理強いるかたちになってしまったけど、私は勇の過去を知りたかった。
「わかった。待ってって。」
そう言って勇は部屋の隅にあるハシゴを上りロフトに上がった。
「あの時の写真なんて、もうずっとあけてないからなぁ。何処行っただろう、、。」
 ロフトの上から勇むの声がする。私はハシゴの下から上を見上げた。
「あった。これかな?」
 勇が上から下を覗いた。
「はい。これだと思う。」
 勇は上から紙袋を差し出した。受け取ると案外それは重く、何冊かのアルバムが入っているようだった。
「わざわざごめんね。どうしても見たかったの。」
 私は微笑んだ。だけど勇はロフトからは降りてはこなかった。