甘酸っぱい彼

あたしは大人になってみることにした。
「あたしは男の子が目当てで男子校に入ったんじゃないんだ。あたしと修は別にただ単に友達なだけだし、奪うつもりもないから安心して。」
すると美衣奈ちゃんは携帯を取り出すと言った。
「よかった♪ 百季ちゃんとは仲良くなれそうな気がするっ。アド、交換しない? これからもお話したいから。」
美衣奈ちゃんは携帯をあたしの目の前に差し出すと[赤外線でいいよね?]と言ってニッコリ微笑んだ。仕方なくあたしも携帯を出すと赤外線でアドを交換し、登録した。
するとタイミング良く、あたしの降りる駅に着いた。
「美衣奈ちゃん、あたしもう行くね?」
「あっ、うん。また会おうね。」
あたしはそう言うと電車から降りて行った。


学校の校門に着くと後ろから誰かに呼ばれた。振り返ると桂太郎だった。
「百季ちん、おはよ。」
「あっ、桂太郎・・・。おはよ・・・てか、あたしの事避けてないの?」
あたしは疑問に思っていた事を聞いてみた。
「まぁ、まだ百季ちんの事信用できんけど、今はそんなこと言ってられへんから。」
桂太郎はいつもより真剣な眼差しで話している。そんな桂太郎を見てあたしもつられて真剣な顔つきになった。
「単刀直入に聞くで。向井秀太とキスしたんやろ?」
「な・・・、なんでその事を・・・?」
「修が偶然見たんや。」
「あたし、されそうになったけど・・・してないよ?」
あたしは祐介にも言ったように同じことを言った。
「って事は、修の勘違いなんか?」
「多分・・・。」
「まぁ、修も遠くの廊下から見たって言ってたからハッキリ見えんかったんやな。俺、百季ちんの事信用するからな?」
「うん、ありがと・・・。」
あたしは祐介に修と向井君の話を聞いていたから、申し訳のない気持ちでいっぱいになった。