カランコロン~♪
あたしがカフェオレを半分飲み終えるところで扉が開く音がした。それでも、あたしは視線を読んでいた本に向けたままだった。この本は母が亡くなる前にくれた本だ。難しい本で小さい頃もらったあたしは何が何だかわからなかった。そんなあたしに母は大きくなったら読みなさいって優しく微笑んでくれたんだ。その本を読み始めたのは高校に入ってから。分厚い本で少し首が痛くなるけど、それでも母のくれた本だから読むんだ。あたしが本をまじまじと読んでいると声をかけられた。
「相沢。」
あたしはゆっくり振り向く。後ろを振り向いてあたしは大きく口を開けてしまった。
「む・・・向井君・・・?」
向井君はこの前とは違う眼鏡をかけていた。多分、あの時壊れちゃったから新しいのにしたんだろう。一瞬別人に見えたので、驚いてしまった。
「そんな口開けて・・・痛くないか?・・・まぁ、相沢らしいけど。」

しっ・・・しまった!・・・間抜けな顔を見られてしまった!恥ずかしい・・・。

あたしの顔はみるみる赤くなってゆく。
「合席いいか?」
「どっ・・・どうぞ。」
向井君は優しく微笑み、持っていたコーヒーをテーブルに置くと向い側の席に座った。

向井君が向いの席に・・・、ダジャレ・・・?

変なことを考えた自分に恥ずかしくなった。顔が赤くなるあたしの顔を向井君は不思議といった顔で見てくる。
「向井君、コーヒー飲めるんだっ。」
とっさに話題を作るあたし。
「まぁ、飲めるけど・・・コーヒー牛乳の方が好きかな。」
「すごいね・・・あたしには苦くて飲めないよっ。」
「俺だって最初は苦いって思ったけど、これがコーヒーの美味さなんだってわかった。」
話すときの笑顔が眼鏡で少し隠れてしまってるけど、十分わかる。やっぱりモデルだなぁって感心してしまったり・・・。
「それより相沢。この店よく来るの?」
「うん、ここは落ち着いた感じの雰囲気で和むんだ。」
「俺達似てるな。俺も同感だよ。」
似てると言われてあたしは嬉しかった。何より同じ考えだった事に胸は躍る。