片翼の天使




ーーーーーー‥





アタマガイタイ‥



鉄の匂い‥

鉄の味がする‥



ここは‥どこ?





「起ーきたぁ?」



高い、甘ったるい声と、数人の気配が頭に響くーー‥


女の子特有と思われる香水の匂いが数種類混ざって、気持ちが悪い‥



「起きたかって聞いてんだー‥よっ」



ゲホッーー‥



お腹に衝撃が走り、思わずむせかえった。


体がイタイ‥
きっと、眠っている間も蹴られていたんだろう。



「ねぇ、不幸の黒猫チャン?」



彼女は、私の前髪を引っ張り、顔を合わせた。

優花まで‥とはいかないものの、綺麗な顔をした彼女。

とても冷たい目をしていた。



「少し調べさせてもらったのよぉ?黒猫チャン」


調べ‥?

どうでもいい。

ここはどこ?

優花は?

帰らなきゃ。



「帰さないわよ?」



耳がイタイ。



「なんであんたなんかが王子様たちと暮らさなきゃならないワケ?」



早く帰らなきゃ。



「ちょっと常識をわきまえて欲しいわっ」



あんたがね?

私は思いきり睨みつけた。



「ふん。その瞳!その髪!そしてその声っ!!」



彼女はそう言いながら、ヒステリー気味に私の頬を叩いた。


手足を自由を奪われていた私は、黙って殴られることしかできない。



「男を惑わす黒猫がっ!あんたなんかがあの方達の側に居るなんて、有り得ないのよっ!!!」



あぁ‥思い出した。

この高くて甘ったるい声。

あの時、屋上で‥

海斗だか颯斗だかに告白してたーー‥



「なんとか言いなさいよ黒猫っ!!」



よく響く倉庫のようなこの場所は、彼女の声に震えていた。


高い位置にある窓からは空が見える。

暗い、黒い、夜の闇。



「ふっ、あんたのその髪と瞳と声。それの所為で父親は出て行くハメになったんでしょう?」



その瞬間、

全身が凍りついたのを感じたーー‥