みんな出掛けた後、
魅と昼飯を食べようと思って部屋に行った。


ノックしても応答がなかったから、様子を見ようと部屋に入ったんだ。




魅は眠っていた。

大きな瞳を閉じ、

長いまつげは少し濡れてた。



「ふふっ泣きながら寝てるや。そんな無防備だと、襲っちゃいますよ~?」



魅にタオルケットをかけながら吐いた、

自分の独り言に驚いた。


いつの間にか優しくなってる自分。


今まで、襲っちゃいますよっなんて言ってから襲ったことなんてない。


ましてや、こんなに無防備なのに‥




すやすやと眠るお姫さまの瞳から、またひと雫‥涙が零れ落ちた。



僕は無意識に自分の唇でそれを拭うと

そっと‥ふわふわなお姫さまの頭を撫でた。




僕の中で、確実に大きくなっている魅の存在‥



まだ出会って2日だぞ?


ガラにもなく

ふっと口元の緩みを感じながら、

僕は昼飯を作りに降りたんだ。






作り終えたら、
また様子を見に行こう。

そう思って、2つ目が完成に近づいた時、足音がしたんだ。


一緒に住み始めてから4年目になる、アイツらじゃなくて

軽い、遠慮がちな足音。


すぐに分かった。



魅に声をかけようと振り向いた瞬間、

魅は僕を“颯斗”と呼んだ。


びっくりした‥

嬉しかった。


僕らを見分けるのは、とても難しいと思う。


見分けて欲しいなら


お揃いの服を着なければ良い。

同じ髪の毛にしなければ良い。

一緒に行動しなければ良い。



でも‥

見分けて欲しい

見分けて欲しくない


どちらも本当の気持ち。


つまり、

僕は恐いんだと思う。


ずっと一緒に居たから

産まれた時からずーっと一緒だから。


離れる時のことを考えると……恐い。




魅の存在が大きくなる。



今まで海斗だけだったスペースに


魅が入ってくる。


胸が‥苦しいんだ。