ココは扉からは死角で見えない。

よって、私からも誰が来たのか見えない。


なんとなーく三角座りをして小さくなってみる。

いや、隠れる必要ないんだけどね?



「で、何の用?」



それは低くて冷たい男の声。



「えっと‥あのぉ」



甘ったるい高い女の声。



「橙向(トウコウ)くん。あのっ中等部の時から好きだったの。付き合ってくださいっ」



うわあ。告白場面に居合わせちゃった。



「いいよ」



しかもカップル成立!!なんかこっちまでニヤケてしまう。



「ただし。僕の名前をフルネームで呼んでみ?」



そう言った男の声は、甘くなんてなくて。むしろ、さっきよりも冷たさを感じるような気さえした。



「え‥?」

「呼べたらお前の彼氏になってやる」



何言ってんだろ。


って、はっ!

もーすぐ4時間目が終わる!!

でも扉は1つしかない。


出て行くのは気まずいから、早く終われと念を送ってみる。



「……」

「……」



長い沈黙を破り、女の子が震える声で口を開いた。



「橙向‥海斗‥くん」