歌は‥

アイツを思い出すから嫌いだ。


もう会える事はないであろうアイツ。


名前も知らない。



深々と降る、真っ白な雪の中に


両の翼を傷つけられた
真っ黒な女の子。



その雪に溶けてしまうんじゃないかってくらい


透明で綺麗な

天使の声‥



俺は‥


悲しそうに唄う、

あの時アイツの歌が頭から離れなくて‥



たまに声に出して吐き出さないと、苦しいんだ。


あれから10年も経つのか。




ーーーーーーーー‥





いつものように

誰もいねぇ屋上で

天使の歌を吐き出す。




ふっと視線を感じて、そっちを見たんだ。




そこには




太陽の所為で緑色に光る、真っ黒でふわふわした髪の毛の女が、でっかい真っ黒な瞳をこれでもかってくらい開いて、


フェンスにしがみつきながらこっちを見ていた。




俺の心臓はうるさかった。


もしかして‥

あの時のーー‥





キーンコーンカーンコーン‥




声を掛けようと口を開きかけた時、昼休み開始のチャイムと共に数人の生徒が屋上の黄色い扉を開けた。



もう1度1年校舎をみたが、真っ黒な女はもう、いなかった‥。