片翼の天使

「あっははっはっはっはっはっはっはっはっはっ‥」



緊迫したこの雰囲気の中で、ゆーちゃんがいきなり笑い始めた。



「あはっ、はー‥。みぃ、あんた面白いわ」

「ほや?」



ひーひーと肩で息をするゆーちゃんに、私もみぃちゃんも、周りですら行動が止まる。

振り上げられた女の子のその手は行き場を失くし、なんて不様な格好なんだろう。



「え、何が?」

「なんとか言いなさいの答えが“なんとか”ってアンタっ! そりゃ殴られても仕方ないわー」



するとゆーちゃんは、みぃちゃんの頭をがしがしと撫で、スタっと立ち上がった。



「な‥なによ」



唇に薄く笑みを浮かべながら相手を見据えるゆーちゃんには、もの凄い紫色の威圧感を感じる。



「ふっ別に?」

「あ‥あんた達みたいな平々凡々な一般ピープルが‥五月女さんと‥ねぇ?」

「そうよっ五月女さんがどんな人なのか、知らないわけ?」



--‥もう、良いよ。

何も言わないで。
解ってるから。

求めなければ良い。

私が腹を割って心から笑える日なんて、来ないから。

そんな友達なんか、出来ないから。


もう、良いよ--‥



ハラリハラリと舞い吹雪く春の雪の、なんて残酷なことだろうか。

それは白く色を失い、まるで、私のココロのようだった。







--------‥









「なんで? 柚子は柚子でしょ?」




--‥え?




「柚子は柚子だもん。たとえ5月生まれじゃなくても、柚子は柚子だよ? 友達だよ? ね、柚子♪」








舞い吹雪く春の雪は、
みぃちゃんの暖かい光で
その鮮やかさを取り戻す。


きっと、美しい風景だろう。

一面のピンクが風に乗って舞い上がる。


でも、滲んでしまって
よく‥見えなかった。






その日から私は、

五月女柚子を、臆することなく名乗ることが出来るようになった。


だって、“五月女”を名乗っても、“柚子”を見てくれる人が居るから。


“五月女柚子”は、

今日、もう一度



--‥生まれたんだ。