片翼の天使

教室に戻れば--‥



「五月女さん大丈夫ぅ?」

「心配したんだよ?」

「五月女さんに何かあったらどうしようかと思ったー」

「こんな奴より、俺のがよっぽど心配してたからねっ」

「なによー私だって」



--‥誰が1番心配してたかの自慢大会が始まった。


五月女さん五月女さん五月女さん五月女さん五月女さん五月女さん五月女さん--‥


うるさい。うるさいうるさいうるさいっ!!

耳を塞いで逃げようとした。その時‥



「柚子ー今日お弁当? 学食?」

「みぃはバカだねぇ。今日は午前で終わりでしょ?」

「え、そうなの?」



あの2人が、天使のように見えた。



「みぃちゃん、ゆーちゃん。今日ご飯食べて帰るの? 一緒に行こっ」



そう言って2人の元へと駆け寄る。

すると--‥



「‥なぁに? あの子」



その声を筆頭に、教室全体がざわめき出す。


そして。



「ちょっと、あんた達なんなの?」



みぃちゃんとゆーちゃんの居る机を勢いよく叩いた女の子。

ゆーちゃんは綺麗な顔を無表情に。

みぃちゃんはその大きな瞳を円くしてキョトンとしてた。


やっと出来たと思った友達だけど。

やっぱり……



「あんたらなんかが五月女さんを呼び捨てにして良いワケないでしょ?」



求めてはイケナイんだよ。



「そりゃ柚子が決める事でしょ?」



そう声を発したゆーちゃんは、みぃちゃんの机に腰掛けながら、その無表情でただ相手を見ているだけ。

綺麗な人の真顔ほど、恐いものはないワケで。


それに怯えたのか、女の子たちはみぃちゃんに標的を変えた。



「何とか言いなさいよ、遅刻女っ!!」



みぃちゃんは少しだけ首を傾げ、やっぱり相手をじぃーっと見ていた。

そして、その美しい声で言ったんだ。



「なんとか」

「こ‥の女ぁ!」

「馬鹿にしてんのかよっ」



今にも殴りかかりそうな勢いでまた机を派手に叩く女の子たち。


みぃちゃんが殴られてしまう。

そんな時になんで‥なんで身体が動かない?

私は、友達になりたいって思った子すら護れない。

そんな私に、友達を作る資格なんてない。


私が五月女でいる限り、友達を求める資格なんて……ないんだ。



ヒラリヒラリと舞う桜は

まるで、冷たく降り積もる雪のよう--‥